駆け出しの医療翻訳者、マイコです。
今日は治験翻訳の中で見かける”CTCAE”について、サクッとまとめてみたいと思います。
- CTCAEって何?
- 有害事象の定義
- その他の重要な語彙と定義
CTCAEって何?
ドクター治験、がんの臨床試験の文書に出てくる”CTCAE”って何ですか?
私、治験文書の翻訳に挑戦したいと思っていて、理解を深めたいので教えてください。
CTCAEはCommon Terminology Criteria For Adverse Events の頭文字だよ。
米国国立がん研究所(National Cancer Institute)が主導してがんの治療法の安全性の評価を容易にするために作ったんだ。
全てのがん領域での有害事象の記録や報告を標準化し、世界共通で使用する目的で開発されたんだよ。
日本語では「有害事象用語基準」と訳されているよ。
なるほど。もう少しわかりやすく教えてください。
治験では、まだ開発中の薬を患者に投与して試験を重ねるでしょ?
その際にその薬の安全性(毒性)を確認しながら新薬の開発を行うんだ。
治験を行う者は、治験の段階で患者に起こった有害な事象とその重症度をすべて報告しなくてはならないんだよ。
その時に有害事象の重症度を評価する際に国にばらつきがないようにしようということで、世界共通の基準を作ったということなんだよ。
なるほど。基準を合わせることで、世界共通の認識のもとに治験が行われるということですか。
そうだね。 CTCAE を用いることで、がんの臨床試験で発生した患者の有害事象の重症度を共通の基準の元で評価することが出来るんだよ。
CTCAEには、具体的にはどういうことが書かれているんですか?
有害事象、つまり、いわゆる副作用、合併症、毒性、術後の合併症などを含む、あらゆる好ましくない症状、徴候、疾患、臨床検査値の異常に関する用語とグレードが書かれてあるんだ。
これを元に、世界共通の基準のもと、有害事象の評価が出来るということ。
ちなみにここでいう有害事象とは、治療や処置の因果関係は問わないんだよ。だから、投薬には一切関係のない、通院中のケガなども含まれるんだよ。
そうなんですね。がんの薬の治験だったら、治療や医薬品が原因のことだけを報告するのかと思ったけど違うんですね。評価の基準ってどうなっていますか?
有害事象はグレード(Grade)で評価するようになっていて、Grade1~Grade5までに分けられるているよ。
グレードは重症度を意味していて、Grade1なら、軽症か症状がないことを指して、Grade5になると死亡を意味するんだ。
👉翻訳上の注意:Gradeの説明の中でセミコロン(;)が使われるけど、そのセミコロンは「または」を意味するので覚えておいてね。
CTCAEは治験を行う中で有害事象の評価と報告に用いる世界共通の「有害事象共通用語基準」である。
有害事象ってなに?
有害事象についてもう少し教えてほしいのですが。
はい。有害事象は英語では”Adverse Events”で、略して(AE)とも表記されるよ。
製薬業界用語辞典を見るとこんな風に説明されているよ。
有害事象とは、治験薬や医薬品などの薬物を投与された被験者・患者に生じる、薬物の投与と時間的に関連した、好ましくないまたは意図しないあらゆる医療上の事柄のことである。投与した薬物との因果関係(副作用など)があるかどうかは問わない。
引用元:製薬業界用語辞典Answers
じゃあ、例えば、入院中にベッドから落ちてケガしたなんてことも有害事象に含まれるんですね。意外ですね。
そういうこと。
有害事象のあらゆる記録を蓄積することで、類似の症例が集まった際には、新しい薬害が発見されることがあるんだよ。
例えば、単にベッドから転げ落ちただけの事故であったとしても、同じような事象が多数報告されると、それももしかすると薬由来の事象であるかもしれないということだね。
なるほどですね。
だから薬に関係ない事象についても記録するんですね。
開発段階の薬だからわからないことが多いですもんね。
有害事象(AE)とは、治験に参加している患者に生じた好ましくない医療上のあらゆる出来事。
治療との因果関係は問わない。
その他の重要な語彙と定義
有害事象の定義はわかりました。
ふと思ったんですが、例えば明らかに薬が原因で起きた事象をあらわす用語はありますか?
もちろんあります。
治験の文書では語彙の意味や概念は翻訳をする際にとても重要なので覚えておこう。
きちんと理解していないと正しく訳すことは出来ないもんね。
文系出身のマイコには少し難しいけど、何度も見て慣れることが重要だよ。
本当にそう思います。最初は全く意味がわからないことでも何回も見て、いろいろ検索して医学関連の文献に触れているといると少し慣れますね。
少しずつ、あきらめずに続けることが大切だと思っています。
その調子。
じゃあ、有害事象の語彙の使い分けについて説明するよ。
大きく有害事象(AE)という概念があるよね。さっき説明したけど、治療との因果関係を問わないんだったよね。
その中で当然、治療との因果関係が否定できないものがあって、さらにその中で、医薬品との因果関係が否定できないものというようにしぼられてくるんだ。
はい。
3つの語彙の概念を覚えておこうね。
- 有害事象(AE):患者に生じた好ましくない医療上のあらゆる出来事。治療との因果関係は問わない。
- 有害反応(AR):有害事象(AE)の中で、医薬品、放射線治療、手術などすべての治療との因果関係が否定できないもの。
- 薬物有害反応(ADR):有害事象(AE)のうち、医薬品との因果関係が否定できないもの。ARのうち、医薬品に関するもの=副作用
なるほど。
有害反応のARはAdverse Reaction、薬物有害反応のADRはAdverse Drug Reactionの略ですか?
その通り。実際の文書には略語で書かれていることが多いよ。
はい。見たことあります。
それぞれの語彙の背景知識がばっちり頭に入っていると、翻訳も楽になるよ。翻訳ってまずは原文理解だからね。
難しいことも多いけど、新しいことを学ぶのは面白いでしょ?
そうですね。50代なので、老眼などもあって、長くPCを見ているととても疲れるんですが、新しいことに興味を持って勉強を続けることはとても楽しいと思っています。
明日はRECISTについて勉強してみましょう。
はい。よろしくお願いします!!
有害事象関連の3つの重要な語彙と概念
有害事象(AE):患者に生じた好ましくない医療上のあらゆる出来事。治療との因果関係は問わない。
有害反応(AR):有害事象(AE)の中で、医薬品、放射線治療、手術などすべての治療との因果関係が否定できないもの。
薬物有害反応(ADR):有害事象(AE)のうち、医薬品との因果関係が否定できないもの。ARのうち、医薬品に関するもの=副作用
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