こんにちは。マイコです。
今日はRECISTという文書についてサクッと独習したいと思います。
- RECISTとは
- RECISTの背景
- 判定の5つのステップ
- 効果判定基準
RECISTとは
ドクター治験、今日はRECISTについてお願いします。
了解。RECISTもがん治験に関する文書を翻訳する時には知っておかないとね。では始めるよ。
よろしくお願いします。
RECISTは、Response Evaluation Criteria in Solid Tumorsの頭文字を取ったものだね。日本語に訳すと、「固形がんの治療効果判定のためのガイドライン」だね。CACTEと同じく、世界共通の指標だね。CTCAEは有害事象の重症度を評価するための基準だったよね。RECISTは基準ではなくガイドラインだよ。
ところで固形がんはわかる?
なんとなくイメージできます。
つまり、血液のがんとかはこれに属さないということですか?
そういうことだね。 血液のがん以外の、臓器や組織などで塊をつくるがんをまとめて固形がんといっているんだ。
さらに言うと上皮細胞といって各種内臓から発生する上皮細胞がん(胃癌・肺癌・子宮癌など)と非上皮細胞といって骨や筋肉などから発生する非上皮細胞がん(肉腫)に分かれるよ。
はい。
RECISTは、新しい薬の開発の段階でその薬が固形がんに効いているかどうかを判定する世界共通のツールなんだよ。
なるほど。薬の開発ということは、治験ですね。
治験はつまり開発中の薬を治験に参加した人に試しながら効果を見ていくというものですよね。
その通り。
一般の薬は、健康な人を対象に薬の効果を観察するんだけど、がんの薬の治験に関しては、実際のがん患者さんに参加してもらって効果を見ていくんだよ。
がんの薬は健康な人に試すにはそれだけリスクが大きいということだね。
なるほど。そういうことか。
ここで、がん治験の流れをざっと話しておくね。
がん治験の場合、第I相試験では、薬の安全性を見て、どれくらいの投与量が人体に安全かを見るんだ。
第II相に入ると、薬ががんにどのように作用しているかを見るんだね。
第III相に入ると既にある標準薬との比較をするよ。標準薬より効果がない薬は作っても仕方がないしね。
あ、ちなみに標準薬は既存の薬と言う意味ね。
第IV相は、薬が承認された後長期の有効性と安全性を見る。
だから第IV相は、国に承認されて実際に医療現場で使用する中で、その後の追跡調査をするということだね。
段階を経てすごく慎重に審査していくんですね。
そう。やはり命に係わるから。
さっき、第Ⅱ相試験はがんに対して効果があるかどうかをみる試験だと話したよね。
効果がない薬は第Ⅲ相試験に進まないんだよ。
でも薬の効果の試験を行う国やグループによって効果の認識が違ってたらダメだよね。
そこで世界共通のガイドラインが必要となりRECISTが使われるようになったというわけ。
ドクター治験ありがとうございました。
RECISTがなんなのかざっくりとはわかりました。
RECISTの背景
さて、RECISTの背景について少し説明を補足するよ。
はい。よろしくお願いします。
RECISTが作られた歴史をサクッと話しておくね。
RECISTが誕生する前は、1981年にWHOが「効果判定基準」を作っていたんだよ。
だけど、その基準は不備が多かったんだって。
そんな中、国際ワーキンググループという団体が設立されてこの基準が発表されたんだって。
もともとは2000年にある医学雑誌(EUROPEAN JOURNAL OF CANCER)にこの基準が公表されたんだよ。
その後RECISTは広く使われるようになったんだ。
その後不具合なども指摘されて、今は改訂版が使われているよ。
日本語版はJCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)が作成しているよ。
なるほど。
WHOの作った基準では不具合があったわけですね。
JCOGは国立がん研究センターが直接支援しているんですね。
判定の5ステップ
それでは実際に治験において腫瘍にどのように効果があったのか、RECISTをガイドラインとして腫瘍縮小効果があったのかどうか判定する5つのステップについてサクッと話しておくね。
なんか、ちょっと難しそうですね。
でも判定の流れが少しわかっていると、翻訳する際に役立ちそうですね。
ではよろしくお願いします。
了解。では5つのステップを簡単なリストにしてみるね。
- 病変が測定可能かどうかを判断 RECISTをガイドラインとして、腫瘍が測定「可能」病変であるか、測定「不可能」病変であるかをまず決定する
- 標的病原の選択 測定「可能」な病変を大きなものから5つ選ぶ
- 各カテゴリーで効果を判定 3つのカテゴリーで効果を見る(①標的病変の増大/縮小を判定 ②非標的病原の効果を見る~消えたか増大したか ③新病変の有無を見るー有か無か
- 総合効果の判定 決められたコースごとに判定する
- 最良総合効果の判定 総合効果から最良総合効果を算出する
むむ、難しいですね。
要は薬が固形がんに効いているかどうか を判定するステップですよね。
病変が測定可能かどうかを判断して、標的病変を選んで、カテゴリーごとに判定して、それを総合的に評価して、その中の最良の効果を判定するという流れで間違いないですか?
ところでドクター、いまさらですが。。。
「病変」ってなんですか?
なんでも聞いて。
病変は英語ではlesionだね。
要は、病気で変化した部分のことを指すんだ。患部と思えばわかりやすいかな。
わかりました。
5つのステップで判定していく中で、判定の共通認識となるもの、いわゆる「ものさし」となる考え方が書かれているのがRECISTというわけだよ。
効果判定基準
ところで、効果判定についてもう少し説明をしてくれますか?
もちろん。
まずは、ステップ①の病変が測定可能かどうかを判断する基準は、腫瘍病変は長径が10㎜以上であること。リンパ節病変であれば、短径が15㎜以上であること。
ステップ②はの標的病変を選択する方法は、測定可能病変の中から径の大きいものから5つ選択する。
ステップ③では標的病変の効果を判定するよ。
評価は5段階
- CR complete response(完全奏功)
- PR partial response(部分奏効)
- SD stable disease(安定)
- PD progressive disease(進行)
- NE not evaluated(評価不可)
ステップ④では各コースごとの総合評価をする。
ステップ⑤では総合評価から1つの最良総合評価を算出する。
ステップ④と⑤はちょっとわかりにくいですね。
確かに。これを理解するにはがん臨床試験の流れを基礎から勉強する必要があるね。
とりあえず効果判定について翻訳者として知っておくべき必須語彙を抑えておこうか。
そうします。またがん臨床試験の流れについてしっかり教えてください。
了解!
では標的病変の評価5段階について説明をして今日は終わりにしますか。
完全奏功(Complete Response: CR): すべての標的病変の消失
部分奏効(Partial Response:PR): ベースライン径和に対して30%以上減少
進行(ProgressiveProgressive Disease: PD): 経過中の最小の径和に比して標的病変の径和が20%以上増加、かつ径和が絶対値でも5㎜以上増加
安定(Stable Disease:SD): 経過中の最小の径和に比してPRに相当する縮小がなくPDに相当する増大がない
評価不能(Not Evaluated:NE) :
はい。5つの評価についてはなんとなくわかりました。
とにかくRECISTという世界共通のガイドラインを用いて、どこの国で誰が臨床試験の評価をしても同じ評価が出来るようにしているということですよね。
そこの基本的なところは理解しました。
今日はそれくらいでいいかな。
またそのうち復習をしよう。
- RECISTとは、固定がんの治療効果を判定するための評価基準が書かれたガイドライン
- RECISTとは、2000年に国際ワーキンググループが公表したガイドライン(元々 WHOが効果判定基準を定めていたが問題があったために新たに作成された)
- 薬の効果を判定するには5つのステップを踏む
- 判定基準は5つある(完全奏功 CR 、部分奏効 PR、安定 ST、進行 PD、評価不能 NE)
【 補足】RECISTは第Ⅱ相試験から第Ⅲ相へすすむかどうかを決める指標となるが、「治療」の継続や中止を決める指標とはならない
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